学術変革領域研究(A)の公募研究の内容
領域略称名 | キラル光物質科学 |
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領域番号 | 22A204 |
設定期間 | 令和4(2022)年度~令和8(2026)年度 |
領域代表者 | 尾松 孝茂 |
所属機関 | 千葉大学大学院工学研究院 |
①領域の概要
物体や現象がその鏡像と重ね合わせることができない性質(キラリティー)は、自然界において普遍的に顕在化する。らせんや渦はキラリティーを持つ構造(キラル構造)の一つであり、ナノスケールの分子集合体からミリスケールの生体組織までらせん構造を持つ物質は数多く存在する。物質を配列してらせんなどの構造を創り、構造に起因する機能を顕在化させる科学(物質のキラル秩序化の科学)は、既存の学術の枠を超えた物質科学における普遍的な研究の一つである。物質を自在に操りキラル秩序化する。それは物質科学研究者の究極の夢である。分子から生体組織までの多様な空間スケールの物質を非接触で操作できる現実的な手法は光だけである。
本研究領域では、電磁場構造に由来する光の螺旋性の科学を探究し、分子から生体組織まで多様な物質を光でキラル秩序化する。さらに構造に起因する機能を顕在化させてキラル秩序の化学・らせんの工学・渦の物理学を展開する。
本研究領域では、電磁場構造に由来する光の螺旋性の科学を探究し、分子から生体組織まで多様な物質を光でキラル秩序化する。さらに構造に起因する機能を顕在化させてキラル秩序の化学・らせんの工学・渦の物理学を展開する。
②公募する内容、公募研究への期待等
光の螺旋性と物質の相互作用の科学を探究するため、本研究領域は、光と物質間の角運動量の交換という普遍原理を分子科学・物質科学の立場から「理解」する計画研究A01-03、その普遍原理をトリガーとして光と物質との相互作用がマクロに時空間発展する構造・ダイナミクスを先端技術で「計測」する計画研究B01-03、キラル秩序化を支配する法則を多様な空間スケールの物質に展開させて、新たなキラル秩序と機能を「開拓」する計画研究C01-04の10計画研究から構成される。
また、10計画研究は互いに連携して、物質の構造を階層的に捉えた「キラル秩序の化学」「らせんの工学」「渦の物理学」を展開する。例えば、自然界の生体分子などのキラル物質において、右手系あるいは左手系のみが偏って存在するホモキラリティーの発現には、古典的な流れの渦や円偏光が重要な役割を果たしている可能性が指摘されてきた。超螺旋光によって100%に迫る鏡像過剰率のキラル結晶化が達成できれば、ホモキラリティーにおける光の螺旋性が果たす役割を深く理解できる。さらに、光の螺旋性と分子の相互作用がナノからマクロに時空間発展してキラル結晶化にいたる過程を高分解能・高感度に顕微計測できれば、キラル結晶化のメカニズムが解明できる。また、キラル物質の超微量検出・解析、病理マーカー計測などを可能にし、合成化学・創薬・医工学にも貢献できる。これらを<キラル秩序の化学>と呼ぶ。
生物では、らせん構造に由来する円偏光構造色の発色・円偏光の認識などの特性が知られている。生物を模したらせん構造の創成は、情報秘匿・立体ディスプレー・円偏光発光新奇物質・円偏光および光渦発振レーザーの実現につながるバイオミメティクスである。コラーゲンから筋肉線維まで生体組織の配向はらせん性を示す。生体組織あるいは生体適合性材料を人工的に秩序化して3次元らせん組織を構築することは、人工生体組織の構築、ひいては、再生医療などにもつながる。これらを<らせんの工学>と呼ぶ。
磁性体や液晶に現れる渦状の欠陥構造であるスキルミオンは、次世代の低消費電力不揮発性磁気メモリ・光アドレスメモリなどの有力候補であるが、所望の場所に生成・制御することは未だ容易ではない。集光した光の螺旋性を磁性体や液晶に転写できれば、所望の場所にスキルミオンを生成する手法を提供できる。また未解決問題の一つである乱流を理解するため、量子乱流が注目を集めている。物理的なプローブを入れることが難しい超流動体中で、光の螺旋性と遠隔性を通じて量子渦を観測・操作できれば、極低温物性科学の新展開につながる。これらを<渦の物理学>と呼ぶ。
公募研究として、<計画研究>を補完して研究領域の研究推進を強化できるもの、「キラル秩序の化学」「らせんの工学」「渦の物理学」を強力に遂行できるもの、本研究領域の理念を飛躍的に拡張して学術領域を広げるもの、という3つの観点を重視して優れた提案を積極的に採択する。その結果、本研究領域の普遍性・学際性を高めることを期待する。
また、10計画研究は互いに連携して、物質の構造を階層的に捉えた「キラル秩序の化学」「らせんの工学」「渦の物理学」を展開する。例えば、自然界の生体分子などのキラル物質において、右手系あるいは左手系のみが偏って存在するホモキラリティーの発現には、古典的な流れの渦や円偏光が重要な役割を果たしている可能性が指摘されてきた。超螺旋光によって100%に迫る鏡像過剰率のキラル結晶化が達成できれば、ホモキラリティーにおける光の螺旋性が果たす役割を深く理解できる。さらに、光の螺旋性と分子の相互作用がナノからマクロに時空間発展してキラル結晶化にいたる過程を高分解能・高感度に顕微計測できれば、キラル結晶化のメカニズムが解明できる。また、キラル物質の超微量検出・解析、病理マーカー計測などを可能にし、合成化学・創薬・医工学にも貢献できる。これらを<キラル秩序の化学>と呼ぶ。
生物では、らせん構造に由来する円偏光構造色の発色・円偏光の認識などの特性が知られている。生物を模したらせん構造の創成は、情報秘匿・立体ディスプレー・円偏光発光新奇物質・円偏光および光渦発振レーザーの実現につながるバイオミメティクスである。コラーゲンから筋肉線維まで生体組織の配向はらせん性を示す。生体組織あるいは生体適合性材料を人工的に秩序化して3次元らせん組織を構築することは、人工生体組織の構築、ひいては、再生医療などにもつながる。これらを<らせんの工学>と呼ぶ。
磁性体や液晶に現れる渦状の欠陥構造であるスキルミオンは、次世代の低消費電力不揮発性磁気メモリ・光アドレスメモリなどの有力候補であるが、所望の場所に生成・制御することは未だ容易ではない。集光した光の螺旋性を磁性体や液晶に転写できれば、所望の場所にスキルミオンを生成する手法を提供できる。また未解決問題の一つである乱流を理解するため、量子乱流が注目を集めている。物理的なプローブを入れることが難しい超流動体中で、光の螺旋性と遠隔性を通じて量子渦を観測・操作できれば、極低温物性科学の新展開につながる。これらを<渦の物理学>と呼ぶ。
公募研究として、<計画研究>を補完して研究領域の研究推進を強化できるもの、「キラル秩序の化学」「らせんの工学」「渦の物理学」を強力に遂行できるもの、本研究領域の理念を飛躍的に拡張して学術領域を広げるもの、という3つの観点を重視して優れた提案を積極的に採択する。その結果、本研究領域の普遍性・学際性を高めることを期待する。
③公募する研究項目、応募上限額、採択目安件数
研究項目番号 | 研究項目名 | 応募上限額(単年度当たり) | 採択目安件数 |
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A04 | 超螺旋光が誘導するキラル秩序化を理解する補完する研究 | 実験的研究:300万円 理論的研究:200万円 |
18件 3件 |
B04 | 超螺旋光が誘導するキラル秩序化を観測する補完する研究 | ||
C05 | 超螺旋光が誘導するキラル秩序化を開拓する補完する研究 | ||
D01 | 「キラル秩序の化学」「らせんの工学」「渦の物理学」を推進する展開研究 |